今回ビーユアセルフが支援・指導したのは、コンテンツビジネス部 スポーツ&ライブビジネス推進室の方々です。建設後の運営受託期間はなんと30年という、愛知県新体育館整備・運営等事業(※)。そのコンペ獲得に向け、最終プレゼンで競り勝つための戦略を練り上げました。
(※)【愛知県新体育館整備・運営等事業とは】世界最高水準の規模・機能を有し、愛知・名古屋の新たなシンボルとなる総合アリーナ整備事業。2025年オープンを目指す。前田建設工業(設計・建設)とNTTドコモ(維持管理・運営)を代表企業とするコンソーシアム(国内外8社)が、2021年2月に最優秀提案者に選ばれて事業落札した。最大収容人数は1万7千人を予定。
※上記と並行して、メールによるサポート
岩下
今回はまさに、果てしない夢を描くようなビッグプロジェクトです。まずはチームのお仕事について教えてください。
石村様
「べニュー」と呼ばれる大規模会場で、スポーツや音楽ライブの体験価値を高めるビジネス開発に取り組んでいます。「べニュー」は会場という意味で、大会場・大規模イベントのビジネスとしての発達とともに、市民権を得てきた言葉です。
ベニューでも、屋根があるのがアリーナ、観客数が概ね2万人を超えるのがスタジアムというイメージです。
佐藤様
ドコモがこれまで提供してきたのは、デジタル分野が主戦場のITやコンテンツでした。
次はべニュー市場の勢いに乗り、リアルな接点においてもお客様に価値を届けたい。新アリーナ事業を担う会社を⽴ち上げ、何を作り、どう運営するのかという全体統括に取り組んでいます。
堀内様
べニューという場所自体を使って、よりエンターテインメント性のある仕掛けをつくる。
アリーナ設備の運営・維持から、質と訴求力の高いコンテンツの誘致、スマホを用いた最先端のライブ鑑賞体験や物販の仕組みまで。これらをコンソーシアムの各社と連携しながらドコモ方式で進めるということです。
今回の新アリーナへの挑戦は、将来のビジネスモデルを形づくる大きな転換点になりそうですね。
どうしてビーユアセルフにプレゼンの支援・指導を依頼されたのでしょうか。
石村様
これは総勢8社を巻き込むプロジェクトの、最後の最後の一番大切なプレゼンです。ほぼメインの部分を任され、「やれることは全部やったうえで望みたい」と心に決めました。
ビーユアセルフさんに対しては、かねてからの信頼がありましたから。岩下さんのダイヤモンド・オンラインやSNSでの発信内容を読んで「一緒に考えながら作っていけそう」と期待しました。
石村さんとはかつてNTTコミュニケーションズで机を並べて仕事していましたからね。変な印象を持たれていなくて良かったです(笑)。
岩下
「ビーユアセルフ」という社名には、「あなた⾃⾝が本当に⾔いたいこと、かなえたいことを伝えましょう」という願いが込められています。
ともに考え、最適な表現を探し当てるスタイルでお⼿伝いできればと。実際に⽀援を受けてみていかがでしたか。
石村様
単なる話し⽅講座とは全く違いましたね。アナウンサー的な話し⽅とか、ジョブズのここを真似ようとか、全然出てこない。「本当に⾔いたいことは何か」、「他にふさわしい表現⽅法はないか」。何度もキャッチボールを繰り返し、考え抜きました。
例えば、いわゆる「噛む」ことなんて別に⼤きな問題じゃない。しっかりとした⾃分の思いを腹から伝えることのほうが、何倍も⼤切だと実感しました。
佐藤様
聞く側の気持ちになり、いかに双⽅向的に伝えるかという視点も教えていただきました。会社での説明資料作成の経験などから、どうしても全部の情報を資料に盛り込みがちです。でも情報を磨き込まなければ、伝わるプレゼンとは⾔えません。
スライドに載せるべき要素と、話者が⾔葉で伝える要素を、どう効果的に織り交ぜて設計するかという話が印象的でした。
堀内様
最終的には混じり気のない、澄んだメッセージになりました。五感を刺激する具体例や映像を⾒せるというのも重要なポイントですね。
「グローバル」「世界最先端」といった抽象語だけでは、なかなか実像が伝わりませんからね。
プレゼンは、理屈で説得するのではなく、聞き⼿に話し⼿が⾒ているものと同じ⾵景を⾒せ、匂いや⾵を感じてもらい、体感してもらうものですから。
石村様
そういえば、印象に残っているエピソードがあります。採⽤担当者が会社説明会で「うちは楽しい会社です」と⾔っても、本⼼でなければ学⽣の⼼に響かないというお話。
その話、しましたね。「和気あいあいと楽しい職場」なんて⾔葉を、何の気なしに⼝にしてしまう。思ってもいないのに(笑)。
そこから、ウソが始まってしまう。⼈は我知らずにウソをつくんです。相⼿が喜ぶ⾔葉を優先していると、逆に相⼿の⼼に届かない。
石村様
今回発表した私たちのプレゼンに、ウソは⼀つもありませんでした。
佐藤様
本当に⾔いたいことだけを残せましたね。
「⾃分とは何なのか」という視点を意識する⼤切さを、あらためて実感しました。プレゼンだけでなく、⽇常のコミュニケーションでも意識すべきことが多かった。
ただ普段はどうしても相⼿に忖度し、⾔葉を選ばざるを得ない場⾯もありますけどね。
それは当然、組織で働く以上は職責や⽴場に配慮した発⾔が必要になると思いますよ。
さて、話し⽅の技術についても振り返らせてください。佐藤さんには⺟⾳の強調、堀内さんには抑揚を付けることをポイントとしてお伝えしました。
佐藤様
⺟⾳⼀つひとつを強調して発⾳すると、皆から「良くなった!」とのリアクションが。驚きました。⾃分では変化に気付きにくかったのですが、少しの違いで変わるものですね。
堀内様
抑揚を効果的にするためには、⽂章中で⼀番重要な所に⼭を作ること。また、語尾や「てにをは」を強調させないこと。
プレゼンに限らず、⽇常でも使いたい実践的なテクニックを教えていただきました。
そして⼭を作るためには、短⽂化が不可⽋です。構成を分かりやすくするだけではなく、聞き取りやすくするためにも注意したいですね。相⼿の反応を確認する間も捻出できますしね。
岩下
プレゼンは成功し、⾒事コンペを勝ち取りました。その後の状況はどうですか。
石村様
優先権を獲得できたと聞き、もちろんうれしくてほっとしました。でもすぐに、提供責任という⼤きなプレッシャーが押し寄せました。
プレゼン前に⾒えていた⾵景は⼀変しました。しかし⾔ったからには必ず実現させなければなりません。
応援の声もいただくので、しっかり期待に応えていきたいです。
堀内様
決定の瞬間はすごくうれしくて、涙ぐんだメンバーもいました。
それまでの積み重ねを伝えるべく全⼒でメッセージを精査し、すべて表現できたからこそ得られた喜びでしょう。
当社は最後のほんの⼀部をお⼿伝いしただけですが、私にも思わず込み上げてくる物がありました。いい夢を⼀緒に描かせていただたき感謝です。
今後はどのような展望をお持ちでしょうか。また、ビーユアセルフに期待できそうなことがあればお願いします。
石村様
これから様々な⽴場の⼈がプロジェクトに加わってきます。計画を進化させ、必ず実現するという強い思い。これを常に⾃問⾃答しながら、皆と共有しなければなりません。
外向きのプレゼンに限らず、「思いを伝える」⼤切な局⾯が訪れるでしょう。その時にはまた、⼀緒に考えていただきたいですね。
佐藤様
30年という⻑期間の事業を、私たちがずっと⾒られるわけではありません。新たな⼈が共感し、⾵を吹き込み、価値を発展させられる組織⽂化を醸成できればと思います。
「伝え⽅」の⾯では、コンテンツそのものの価値や表現に対する理解を、部全体で⾼められたら良さそうです。事業の⾒え⽅も全く変わってくるでしょうね。
堀内様
お客様が笑ったり涙ぐんだりできるシーンを⽣み出せる段階まで、引き続き実現していきたいですね。
ドコモの企業理念の中に、「新しいコミュニケーション⽂化の世界を創造」というフレーズがあります。アリーナを軸とした今回の挑戦が、いつか当たり前のエンターテインメントとして定着できればい いですね。
あらゆる業界の⽅々との調整が必要ですが、仲間意識が⾼まるようなサポートをいただけたらと思います。
ありがとうございます。こちらの提案や指摘を全て前向きにとらえ、全⼒でプレゼンに向き合われる姿に⼼動かされました。
これからが始まりですね、皆様のご活躍とプロジェクトの成功を願っています!
3人の皆さん、本日はお忙しい中、誠にありがとうございました。
(写真左から)岩下、佐藤様、石村様、堀内様